第134章 契約

メッセージを送信し終えるや否や、あの男は車を走らせて去っていった。井上颯人はしばらくその場に佇んでいたが、彼もまたすぐに姿を消した。

福田祐衣は視線を戻し、静かに告げた。

「運転手さん、出してください」

「へい、わかりやした!」

運転手は途中停車など気にも留めていない様子だ。どうせメーターは回っている。それよりも、バックミラー越しにこっそりと福田祐衣の様子を窺っていた。

乗車時はアシスタントに支えられ、手には白杖まで持っていたから、てっきり目の不自由な方だと思っていたのだ。

まさか、見えているとは!

(弱視ってやつで、全盲じゃないのかもな)

運転手は内心ほっと胸を撫で下ろした...

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